ごあいさつ

~第68回 日本病院・地域精神医学会 帯広大会の開催にあたって~



 この度、第68回病院・地域精神医学会を2025年10月11日(土)~12日(日)の2日間、北海道帯広市にて開催する運びとなりました。帯広での開催は1997年の第40回大会以来、実に28年ぶりとなります。当時のテーマは「病院改革と街づくり」でした。四半世紀を超える歳月を経て、精神保健医療福祉を取り巻く環境は大きく変化してまいりました。
 今回の大会では「私たちの精神保健福祉 ~ その来し方行く末(こしかたゆくすえ) ~」をテーマに掲げました。これは、精神保健福祉の歴史を振り返りながら、現在の課題を見つめ、未来への展望を共に考えていこうという願いを込めたものです。
 本学会は1957年病院精神医学懇話会として創設され、病院・地域精神医学会(84年)、日本病院・地域精神医学会(94年)と改称される過程で、精神医療と地域ケアの統合、地域と医療機関の連携を中心に、患者さんを中心とした包括的ケアの実現を目指してきました。この間、精神科医療は入院中心から地域生活支援へとその軸足を移し、制度面でも大きな変革がありました。
 近年の精神保健医療福祉は、地域共生社会の実現や包括的支援体制の構築、コロナ禍を経験したことによる新たな課題への対応など、さらに複雑かつ多様な取り組みが求められています。高齢化に伴う認知症施策の充実、子どもや若者の心の健康問題、働き方の変化によるメンタルヘルスの課題など、社会情勢の変化に応じた対応も急務となっています。
 広大な十勝地方では、広域分散型の地域特性ゆえの課題に直面しながらも、地域の特性を活かした実践が積み重ねられてきました。特筆すべきは、平素より多職種連携がスムースに行われていたこと、患者さんの地域移行にエネルギーがそそがれ、結果として在院日数の短縮につながったこと、さらには地域での支えとなる社会資源が豊富に存在していたことです。これらの先進的な取り組みは、全国の精神保健医療福祉の発展に大きな示唆を与えてきたと言えるでしょう。
 本大会では、基調講演やシンポジウム、一般演題発表、ワークショップなど多彩なプログラムを通じて、精神保健福祉の歩みを振り返るとともに、未来に向けた新たな挑戦について議論を深める場を設ける予定です。過去の実践から学び、現在の課題を共有し、そして未来に向けた展望を描く貴重な機会となることを願っております。
 十勝の秋は収穫の季節を迎え、色づく大地と澄み切った空気が皆様をお迎えします。学会の合間には、十勝の豊かな食文化や雄大な自然をぜひお楽しみください。(十勝についてはこちらから)

 全国各地より多くの皆様のご参加を心よりお待ち申し上げております。

2025年 春
第68回日本病院・地域精神医学会 帯広大会
大会長 佐々木 青磁
(おびひろメンタルクリニック)