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コラム

第35回精神科リハビリテーション(下)

今回は、精神科リハビリテーションの方法の一つである「作業療法」についてお話しします。「作業療法」とは一般的に耳慣れない言葉だと思われますが、「作業」という言葉からみなさんが思い浮かべるのは、ある一定の「仕事」をするということではないでしょうか(例えば、農作業、土木作業など)。しかし、ここで使われる「作業」とは、食べる、寝る、話す、勉強する、働く、遊ぶなど、人が生活するために必要な営みを指しています。「作業療法」とは、様々な原因により、円滑に生活ができなくなった人に対し、人の営み(作業)を通し行われる治療のことです。

 

作業療法は、英語でOccupational Therapy(オキュペイショナル セラピー)といい、私たちは作業療法士Occupational Therapist(オキュペイショナル セラピスト)を略してOTと呼ばれています。作業療法の対象は、乳幼児(脳性麻痺、発達障がい)から青年・老人(脳卒中や寝たきり、認知症など)、精神障がい(統合失調症など)まで幅広い層の方々です。作業療法の目的は、身体や精神の障がいを回復し、また失われた機能を補い、障がいがあっても意味のある生活を営めるよう支援することです。

 

また精神障がいを患った方々に対し行われる作業療法を「精神科作業療法」といい、精神障がいを患ったことによって生じる様々な問題点(対人関係のトラブル、生活の様々な場面での不器用さ、作業を行う能力の低下など)に対し、日常生活に関連のある行為(家事、仕事、余暇の過ごし方など)を通じて、その人にとってよりよい生活が送れるように手助けをします。そして、その人を取り巻く環境(家族・近隣・職場など)にも働きかけます。

 

作業療法の手段には、料理・絵画・手芸・陶芸・習字・音楽・運動などがあります。例えば、料理を通して、作り方や食べることの楽しみ、買い物の仕方や金銭感覚などを養います。陶芸では、作品作りの面白さを通して、創造力を養い、そして、余暇の過ごし方を考えたり、作品を完成させることで、自分への自信にもつながります。運動(散歩、ミニバレー、ストレッチなど)を通して、体を動かし体調を整えることで、生活リズムの改善や健康管理などがはかれるようになります。

 

作業療法は、対象となる方々が、改めて「これは治療だ」というような認識を持つことなく、料理や陶芸などの活動を楽しむことによって、それがいつの間にかその人の回復の手助け(治療)になっていたというものなのです。

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