北海道帯広市の神経精神科・内科「医療法人社団博仁会 大江病院」

医療法人社団博仁会 大江病院

第7回 「統合失調症の初期症状」

執筆者/院長 大江 徹

 発症の初期症状について、自覚症状からお話しします。
◆ 初期の自覚症状
発症の初期によく体験される症状として、以下の様にまとめられます。(中安信夫著、初期分裂病より)。

1、 自分の意思によらずに、体験そのものが勝手に生じてくると感じられる。その中に、自生思考(とりとめもない考えが次々と浮かんできて、まとまらなくなる。考えが自然に出てくる。連想がつながっていく)、自生視覚(明瞭な視覚的イメージが自然に浮かんでくる)、自生記憶想起(忘れてしまった些細な体験が次々と思い出される)、自生内言(心の中に度々ハッキリした言葉がフッと浮かんでくる)等により、「集中できない」「邪魔される」と感じられる。
2、 自分が注意を向けている事以外の、様々な些細な音や、人の動きや風景、自分の身体感覚や身体の動き等を、意図しないのに気付いてしまう。そのことで容易に注意がそがれてしまう。「どうしてこんなことが気になるのか」と困惑していたものが、「気が散る」「集中できない」と感じる。
3、 どことなくまわりから見られている感じがする。この体験は人込みの中で感じられることもあるが、自室に一人でいる場合でも生じる。気配を感じることもある。
4、 何かが差し迫っているようで緊張してしまうが、何故そんな気分になるのか分からなくて戸惑ってしまう。緊迫が勝手に起こり、それに対して困惑するような症状。

以上の様な発症初期の症状は本人だけが感じ気付いていて、周りの人はその詳細を打ち明けられなければ分からないでしょうから、早い時期にまず家族や身近な人に伝えるか直接にでも、専門家に相談することをお勧めます。
 次に家族や他の人からみた症状(他覚的症状)をお話しします。
◆ 他覚的症状
これらの症状のため気分が不安定で、ふさぎ込んでいると思ったら急に活動的になるように見えます。集中力や注意力が低下し、そのせいで成績が低下することもあります。また疲労し易くなります。周りを意識するあまり疲れてしまい、それまで交際していた友人と交際を避ける様になります。物音や人の動きに過敏となり、イライラしている様子で言葉もきつくなったりします。心配のあまり「どうしたの?」と近付くと「どうもしない」とつっけんどんな態度であるので周りは驚いてしまいます。そして態度を変え詫びたりします。
 さて、このような他覚的症状は健康であっても起こるものであり、見過ごされやすいものです。次回はその後の症状の変遷についてお話しします。

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