北海道帯広市の神経精神科・内科「医療法人社団博仁会 大江病院」

医療法人社団博仁会 大江病院

第25回 「年を取るということ(下)」

執筆者/名誉院長 坂井 敏夫

 しかし、私のような凡人がここまでの心境に到達するのはなかなか難しく、適応状態によって老人のタイプを五つにパターン化したライチャードの分類を紹介します。

一、円熟型
 日常生活において思慮的、建設的、積極的で、家庭や対人関係に満足し、過去に対する後悔も、将来に対する不安もない。
二、安楽椅子型
 他人に依存する受動的生活、安楽な生活を楽しむ。老年になり責任を免れることを望む。飲食の好みが強く、老年の境遇に満足している。
三、武装型
 不安、無力感に対する自己防衛が強く、怠堕を嫌い、自己の業績に愛着し、活動性を維持しようとする。
四、憤懣型
 自己の不満や失敗に対して他人に敵意を示し、攻撃する。時に誇大的となり、世間から隔絶し、自己閉鎖的となり、適応できにくくなる。
五、自己嫌悪型
 一生涯劣等感を持ち、自分の不幸について、自責的となり自己嫌悪し、前途を悲観し、時に自殺を企て、適応性がない。

 四と五のタイプが不幸な不適応状態にあると言えます。
 「横着気質」(これはうつ病親和性の執着気質との対比で私が勝手に作ったものです)の私はとりあえず二のタイプかと考えています。
 皆さんはどのタイプでしょうか。
 さて、年を取ることについてあれこれ書いてきましたが、正直なところ「いつも今が一番若い」などと能天気なことを言っている私は、ことをそんなに深刻に考えているわけではありません。年を取ることも今の自分の延長線上のこととして受けとめていくしかないわけで、結局は、一日一日をどのように生きるかにかかっているわけですから。
 ただ、現実に多くのボケ老人と接していて、運良く自分が年を取り続けてボケられたときには、何とかめんこいボケ老人になっていることを今はただただ願っています。

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