北海道帯広市の神経精神科・内科「医療法人社団博仁会 大江病院」

医療法人社団博仁会 大江病院

第11回 「統合失調症の長期予後とリハビリ」

執筆者/院長 大江 徹

 統合失調症に罹患し、初回の入院の後5年間に、回復もしくは軽度の症状は残っていても、会話や作業能力には問題なく安定した生活を続けている人は、20年前には50%であったものが最近の報告によると約70%になっています。これは薬物療法の進歩やリハビリテーションの工夫により、重度の障害つまり症状が激しく不安定で常に介護を要する状態の人の割合が減ってきている事を示しています。
これら統合失調症の予後を左右するいくつかの課題を示します。
◆ 再発について、長期的な視点での改善には悲観的ではないものの、経過の中で何度か再発することがあります。再発を繰り返すことによって回復が長引くことが多い様です。再発には原因がいくつかありますが、主に通院や服薬などの中断、生活状況の悪化、例えば金銭の余裕がなく衣食住が困難になる時、仕事に戻って何らかの失敗をした時、対人関係上のコミュニケーションのトラブル等です。
◆ 病気を治療することで犠牲にした生活力の低下です。療養する間に体力が落ちたり、対人関係が乏しくなったり、普段の生活が取り戻しづらくなります。やむなく長期入院をすることで、このような低下を来すことがあります。
以上の様な再発の防止や生活力の低下を最小限にするのがリハビリテーションです。
リハビリテーションには「病気を抱えながらも、その人らしい生活を送ることができる」という目的があります。その人が持っている力が保たれるように工夫され、病状の回復に合わせて着実にリハビリを続け、やがてストレスに強くなり、生活を維持し再発を防いでいくことが目標です。
 リハビリには、これまで述べてきたように、急性期や回復期の療養の方法も含まれますが、回復期以降には体力づくり、体ならし、人になじむため時間といったものが必要になってきます。そのためにデイケアや作業所、生活支援センターといった場所が必要になります。そこで行われているプログラムを利用することがよいでしょう。デイケアや作業所では「何かをこなさなくてはならない」というものではなく、そこで自分に合いそうな活動を程よくでき、グループ活動を通じて人と話し合い、自分の意思を伝えたりすることで、ほどよい対人関係の練習をします。そのなかで生活技能訓練(SST:集団精神療法の一つです。自分が出来そうな具体的な目標を立てます。例えば薬の副作用を主治医に質問することができると云う目標を立て、そのSSTグループで練習します。この際上手く行かないことを叱られるのではなく出来ていたことをほめる様にします。そして実際に行動に移してもらい自信をつけ、相手にも肯定的な評価をもらい次の課題に取組んでいきます)や作業療法を利用すると良いと思います。
次回は統合失調症の最終回で、長期入院についてお話しします。

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