北海道帯広市の神経精神科・内科「医療法人社団博仁会 大江病院」

医療法人社団博仁会 大江病院

第1回 「精神神経科医療」

執筆者/院長 大江 徹

 このコラムを読む皆さんは、「精神神経科」についてどの程度ご存じでしょうか?内科や外科と異なり、なかなかイメージのつかめない方も多いのではないでしょうか。また想像や憶測により正確な知識を知り得ないまま、偏見を持つ方も少なくないように思います。そこで精神医療の大枠を知って頂くために、精神神経科医療を巡るいくつかのテーマから話を始めてみます。

1、精神神経科を受診することや、精神や神経に障がいをもつことは特別なことなのだろうか?
 平成11年の全国統計では、年間に約832万人が精神神経科や心療内科を受診したと云われ、総人口の約6.5%をしめています。そのうち204万人が精神や神経に何らかの障がいを持ち、入院ないし通院をしています。その後平成14年にはその数が258万人(総人口の2.0%)に増加しています。数字からすると、決して稀なことではありません。これは同年の糖尿病の通院者数と同じです。最近の精神神経科受診者の増加は、世相を反映したうつ病やうつ状態になる方の増加によります(うつ病については鎌田医師がお話します)。

2、入院をして治療しなくてはならないのか?
 平成14年の全国統計によると、精神や神経に障がいを持つ258万人の内、約82%は外来通院をしていて、残りの18%は入院治療をしています(昭和58年では外来通院が63%、入院が37%でした)。これは最近になり主作用が効果的で、副作用の少ない新薬が多く開発され、それを服用することで入院をしなくても改善することが多くなったことによります。それから全国的な精神保健の知識の普及により病状が軽いうちに受診でき、またクリニックが街の中に相当数でき受診しやすくなったことも要因です。

3、十勝の精神医療、保健、福祉について
 この十勝は精神科病床が人口の割に実に少ないのです。人口10万人対病床数で、全国平均が280 .7床であるのに対し十勝は179 .3床です。これはこの地域が、「障がいを持った方々を病院ではなく地域で支える努力をしている」という結果です。退院を促進することや長期入院者の退院後の生活支援(住居の確保、就業の働きかけ等)がこの地域では四半世紀前から行われてきました。これは精神医療、保健や福祉の関係者の多くが、人権擁護の理念に基づき開放的処遇の理解が優れ、関係者間の連携も良く、地域啓蒙活動が活発な事等に起因すると思われます。今後、障がいを持った方々とこれら関係者が手を組み、チームとして生活の支援をしていく試みが成されようとしています。
次回には、障がいの対象、治療方法についてお話しします。

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